INVESTIGATION
INVESTIGATION
交流電化鉄道および送電線により、沿線の電話線などの通信線、在来線の軌道回路に電磁誘導による
誘導電圧が発生し、雑音や不正動作などの障害を与えることがあります。
電気技術開発では、そのような電磁誘導による影響を事前にコンピュータを用いた
シミュレーションによる誘導予測計算を実施して予測。
そこで得たデータを活かし、
長年培ってきた知識や経験を携えて、鉄道事業者などの顧客の要望に応じて機能の検証や
対策設備の提案に関するコンサルティングを行っています。
また、誘導予測計算に必要な大地導電率・大地固有抵抗測定調査も行っています。
INTRODUCTION RECORD
新青森と新函館北斗を結ぶ北海道新幹線の建設計画においても、新幹線走行時の大電流が誘発する電磁誘導の障害対策を事前に行う必要がありました。電気技術開発は、この電磁誘導障害をシミュレーションによって予測計算する作業を鉄道・運輸機構より受注し、このプロジェクトがスタートしました。
この業務の成果は、障害の恐れがある箇所には事前に対策したため、新幹線開通後も従来通りの通信品質、安全、安定を維持できていることです。
今回のプロジェクトでは、次の3段階で作業が進められました。
まずは 誘導予測計算を行う前の基礎データとして、建設予定線路沿線の土地がどれだけ電気伝導がしやすい場所かを調べるために大地導電率を測定しました。
次に、き電回路(走行している電車に送電する回路)を再現したシミュレーションモデルを作成。事前に測定した大地導電率と建設予定の新幹線の電気設備をコンピュータ上で再現し、電磁誘導のシミュレーションモデルを作成したものです。
最後に誘導支障の調査を行いました。通信設備を保有している通信事業者や自治体に対しての設備調査です。この調査結果を元に、上記シミュレーションモデルを用いて計算し、障害が発生するかどうかについて検討を行いました。
北陸新幹線は電源周波数が東日本の50Hzと西日本の60Hzで異なることから、新幹線の信号設備に電磁誘導による異周波妨害が発生する恐れがありました。そこで電気技術開発が、この異周波妨害の対策設備の設計と検証についての作業を、鉄道・運輸機構から受注しました。
異周波妨害問題は、類例がなく、その解析方法や対策方法は産業目的だけではなく学術的にも有意義なものです。そのため、解析・検討方法の確立そのものも目的での一つでした。
今回のプロジェクトでは、北陸新幹線の金沢延伸計画において、異周波数妨害の懸念の大きい「新高田き電区分所」と「新糸魚川き電区分所」で最初のシミュレーションを行いました。その結果で得られた数値は許容範囲内でしたが、以前に行った同様な案件でシミュレーションと実測結果との乖離が大きいことが判明していたので、まだ安全であるとは断言できない状況でした。そこで、シミュレーションの精度を向上し、正確に妨害の大きさを確認することとしました。
そのために、まずはシミュレーションの高度化にあたり、土木構造物中の鉄筋を再現。また、回路モデルの最小単位を従来の1km単位から0.5m単位に詳細化しました。これらの結果、シミュレーションの精度が大きく向上し、異周波妨害が確かに許容値の範囲内であることを確認することができたのです。その後の実地試験により、シミュレーションの妥当性の確認も行っています。
また、このシミュレーションの高度化の提案と検証については電気学会にいくつかの論文を投稿。それが評価されたことにより、電気学会から進歩賞を受賞しています。